制度・税金

年末調整が廃止されるとどうなる?確定申告の必要性も解説

年末調整が廃止されるとどうなる?確定申告の必要性も解説
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「年末調整が廃止されると聞いたけど本当?」
「廃止されたらどんな影響が出るのだろう?」

年末調整の廃止は正式には決定していないものの、将来的には廃止へと動いているのは事実です。背景にはマイナンバー制度の普及や働き方の多様化があり、税務手続きの効率化を目指す動きが加速しています。

年末調整が廃止されると国民全員が確定申告を行う必要がありますが、マイナポータルの整備により、手続きは現行の確定申告よりも簡素化されるでしょう。とはいえ、税金の基礎知識が必要不可欠となるのは確かなことです。

本記事では年末調整廃止後の影響と必要な準備について、具体的に解説します。今のうちから学びを進め、将来起こり得る確定申告に備えましょう。

この記事でわかること
  • 年末調整の基礎知識
  • 年末調整が廃止されるメリットとデメリット
  • 年末調整廃止に備え今からできること
こんな人におすすめの記事です
  • 年末調整が廃止されるかどうか知りたい人
  • 年末調整が廃止される影響を知りたい人
  • 年末調整が廃止されても困らないようにしたい人

年末調整の廃止は実現される?

年末調整の廃止は実現される?

年末調整の廃止は現時点では具体的な内容や開始時期は決まっていませんが、近年では取り沙汰される機会も増え、将来的に廃止される可能性も大いにあります。

議論が活発化しだしたきっかけは、2024年の自民党総裁選挙における河野太郎氏の公約です。年末調整廃止を掲げる背景には、マイナンバーによる所得管理を活用した税務申告の効率化や、デジタル化推進、働き方の多様化への対応などがあります。

マイナンバーカードの交付率は2024年1月時点で70%を超え、マイナポータルを活用した確定申告も前年比約7%増加しています。制度の整備が進むにつれ、年末調整廃止の実現可能性は高まっていくでしょう。

年末調整の基礎知識

会社員の多くは毎年年末調整を行っていますが、制度の詳細をしっかり理解している人は多くありません。廃止に備え、まずは基本的な知識を確認しましょう。

年末調整とは

年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収された所得税の過不足を精算する制度です。毎月の源泉徴収は各種控除を考慮せずに計算されているため、年末に一括して調整を行う必要があります。

給与から天引きされた税金と実際に支払うべき税金を一致させた結果、納税者は過剰に支払った税金を取り戻せる可能性があるのです。

また、年末調整では基礎控除や配偶者控除、扶養控除など、さまざまな控除を適用することができます。これにより、課税所得を減少させ、納税額を軽減できます。

たとえば、年末調整で生命保険料控除や住宅ローン控除を申請し、12月の給与振込がいつもの手取りより多かった経験をした人もいるでしょう。これは控除を適用した結果、納めた税金が実際の納税額を上回り、税金が還付されているためなのです。

毎年何気なく行っている年末調整ですが、意義や目的を理解しておくと将来の節税にもつながります。年末調整廃止を前に、理解を深めておきましょう。

年末調整の対象者

年末調整の対象となるのは以下の条件を満たす給与所得者です。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を会社に提出している人
  • 年間を通じて勤務している人または年の途中から働き始めて年末まで勤務している人

正社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなど、雇用形態に関係なく、給与を受け取っているすべての従業員が対象となります。

ただし、次の給与所得者は年末調整の対象外となります。

  • 年収2,000万円以上の人
  • 災害減免法の規定により、源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

対象外の場合は確定申告が必要となるケースが多いので、改めて確認しておきましょう。

年末調整の手続き方法

年末調整は主に会社の総務部門や経理部門などが手続きを行います。
従業員は扶養控除等申告書や保険料控除申告書、住宅ローン控除証明書などの必要書類を提出するだけで済みます。多くの人が、年末調整の際に細かい税計算をした経験はないことでしょう。

会社が税務署への提出や税金の精算を代行してくれるため、従業員の手間は最小限に抑えられているのです。

年末調整が廃止されるとどうなる?

年末調整が廃止されると、国民全員が確定申告を行うことになります。一見すると大きな負担増のように思えますが、マイナポータルの整備により、手続きは現行の確定申告よりも簡素化される見込みです。

具体的には、給与や保険料などの情報がマイナポータル上で自動連携され、必要事項を確認するだけで申告が完了する仕組みが想定されています。スマートフォンやパソコンから24時間手続きが可能となり、利便性は大幅に向上するでしょう。

ただし、税金の計算や申告手続きは個々の納税者に委ねられることになります。自らの税金に対する理解を深める機会が増え、税への意識が高まる一方で、使えるはずの控除を申告し漏れたりなど、損をしてしまう可能性もゼロではありません。

したがって、年末調整が廃止されるまでに、税金に対する学びを自発的に行う必要があるのです。

年末調整廃止のデメリット

年末調整廃止のデメリット

年末調整が廃止されることで生じる主なデメリットは次の2つです。

年末調整廃止の論争が本格化する前に、デメリットについてしっかり理解しておきましょう。

確定申告が義務付けられる

確定申告が全国民に義務付けられることで、不慣れな人にとって新たな負担が発生します。

確定申告は複雑な手続きが必要で、誤りも発生しやすいのが現状です。したがって、年末調整廃止に先立ちマイナポータルの整備と簡素化が不可欠といえるでしょう。

税務署の事務量が増える

確定申告者の大幅な増加により、税務署の事務負担も増大します。

2023年の確定申告者数は約2,300万人でしたが、年末調整廃止後は4,000万人以上に増加する見込みです。確定申告者数が増える分、税務署の事務量も増えることになります。

申告期限の集中による混雑や、審査の遅延が懸念されます。スムーズな手続きのためにも、各人がミスを起こさないよう確定申告の手続きについても学んでおくことが求められます。

年末調整廃止のメリット

年末調整廃止のメリット

年末調整廃止には次の2つのメリットがあります。

年末調整の廃止を効果的に活用できるよう、メリットについても知っておきましょう。

税金への意識が高まる

自身で手を動かし確定申告を行うことで、所得税の仕組みや控除制度への理解が深まります。

これまで会社任せだった人も、控除について学ぶことで他の節税方法を知れるかもしれません。年末調整の廃止は、将来の手取り収入増加につなげられる可能性を秘めているのです。

企業の負担が減る

企業側の年末調整にかかる事務作業は膨大です。年末調整が廃止されれば、書類の収集・確認、計算、税務署への提出といった一連の業務がなくなります。

総務部門の業務効率化が実現し、労務コストの削減にもつながります。繁忙期の企業が多い年末、空いたリソースを他に回せれば、企業の従業員にとっても大きなメリットとなるでしょう。

年末調整廃止に備え今からやるべきこと3つ

年末調整廃止に備え今からやるべきこと3つ

年末調整廃止後もスムーズに確定申告を行えるよう、今からやるべきことは次の3つです。

将来の制度改正時に損をしないためにも、今のうちから備えておきましょう。

税金の仕組みを知っておく

給与から所得税が天引きされている現状では、税金への意識が希薄になりがちです。将来の制度改正に備え、今のうちから所得税の計算方法や控除制度の基本を理解しておくことが重要です。

医療費控除や損益通算の対象にならないかを確認し、今年は確定申告に挑戦してみるのもよいでしょう。実際に経験することで、税金への知識や理解はさらに深まります。

節税対策を学ぶ

iDeCo(個人型確定拠出年金)や住宅ローン控除など、会社員でも活用できる節税制度は多数あります。

年末調整廃止を見据え、今から効果的な節税方法を学んでおくことで、将来の手取り増加につなげましょう。

マイナンバーを活用する

年末調整廃止の前提となるマイナンバーカードは必ず取得しておきましょう。早々に作成した人は、有効期限が迫っていないかも確認が必要です。

現在もマイナポータルでの確定申告システムは導入されています。実際に利用してみれば将来の手続きにもスムーズに対応できるので、確定申告にチャレンジする人は今年からマイナポータルを活用することをおすすめします。

まとめ|年末調整廃止は税金について学べるチャンス

年末調整の廃止は、私たち一人一人が税金と向き合うきっかけとなります。確かに手続きの変更は負担に感じられますが、マイナポータルの整備により効率化が進み、むしろ税務手続きは簡素化される見込みです。

今から税制度への理解を深めておけば、年末調整廃止後も適切に確定申告を行えます。ひいては、節税への学びを通し手取り収入の増加につなげられるかもしれません。

年末調整廃止の機会を前向きに捉え、いち早く将来の変化に備えていきましょう。

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