老後資金はいくら必要?計算方法と増やす・確保する手段を解説
目次
将来に備えて資産形成を考えているものの、老後の生活にいくら必要・足りないのかが分からない人も多いのではないでしょうか。
現在、老後2,000万・4,000万問題が話題になっており、老後に必要な資金は年々増加しています。
必要な資金や不足する金額を知らずに、適切な準備をしていないと、老後の生活に支障が出てしまう危険性が非常に高いです。経済的な不安を抱えたまま、リスクの高い老後を迎えるのは避けたいですよね。
この記事では、老後の生活で必要になる金額と計算方法、老後資金を確保するおすすめの手段などについて解説しています。
自分が必要な金額がいくらなのかを把握して、老後の安心した生活のために早い段階で備えておくようにしましょう。
- 老後の生活にはいくら資金が必要なのか
- 老後資金のシミュレーション方法
- 老後資金を準備する前にやるべきこと
- 老後資金を確保するおすすめの方法
- 老後資金が足りないのではないかと不安に思っている人
- 老後に必要な金額をどのように算出するのか知りたい人
- 今のうちから老後の備えをしたいと考えている人
- 老後資金を確保する具体的な方法が知りたい人
老後資金は必要ない?将来必要な金額はいくらなのか
老後の収入や支出は世帯によって変わるため、人によって必要な老後資金は異なります。
総務省統計局では、次の2つの構成パターンで平均収支の統計データを公開しています。
- 独身の場合
- 夫婦の場合
老後の生活がどのような収支になるのかを確認し、資産形成や対策をおこなうための参考にしていきましょう。
独身の場合
65歳以上単身無職世帯の平均収支は、令和5年(2023年)時点で次のようになっています。
- 実収入:126,905円(可処分所得:114,663円)
※約9割が社会保障(年金)による収入 - 消費支出:145,430円
また、消費支出の項目と内訳は、次の通りです。
支出名 | 割合 |
---|---|
食料 | 27.6% |
住居 | 8.6% |
光熱・水道 | 9.9% |
家具・家事用品 | 4.1% |
被服及び履物 | 2.2% |
保険医療 | 5.5% |
交通・通信 | 10.4% |
教育 | 0% |
教養・娯楽 | 10.5% |
その他の消費支出 | 21.2% |
夫婦の場合
65歳以上夫婦のみ無職世帯の平均収支は、令和5年(2023年)時点で次のようになっています。
- 実収入:244,580円(可処分所得:213,042円)
※約9割が社会保障(年金)による収入 - 消費支出:250,959円
また、消費支出の項目と内訳は、次の通りです。
支出名 | 割合 |
---|---|
食料 | 29.1% |
住居 | 6.7% |
光熱・水道 | 8.9% |
家具・家事用品 | 4.2% |
被服及び履物 | 2.1% |
保険医療 | 6.7% |
交通・通信 | 12.2% |
教育 | 0% |
教養・娯楽 | 9.8% |
その他の消費支出 | 20.3% |
老後資金はいくら必要なのか?不足金額はシミュレーションが必須
老後の平均収支データを基にして、どれくらいの金額が不足するのか次の2パターンでシミュレーションをおこないます。
- 独身の場合
- 夫婦の場合
不足する金額は、老後資金を確保する資産形成の基準となるため、必ず把握しておきましょう。
独身の場合
単身者の老後の収支シミュレーションと、不足する可能性が高い金額は次の通りです。
収入と支出の金額は、「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」のデータを基にしています。
■65歳から年金を受給して90歳まで生活する場合(25年)
- 支出:約4,500万
- 収入:約3,500万
- 不足金額:約1,000万
それぞれの詳細は、次の通りです。
- 個人消費:月145,430円
月145,430円×12ヶ月=1,745,160円(年間 約180万)年1,745,160円×25年=43,629,000円(約4,500万) - 実収入:月126,905円(可処分所得:114,663円)
月114,663円×12ヶ月=1,375,956円(年間 約140万)年1,375,956円×25年=34,398,900円(約3,500万) - 不足金額:月30,767円
収入114,663円-支出145,430円=不足30,767円月30,767円×12ヶ月×25年=9,230,100円(約1,000万)
■65歳から年金を受給して95歳まで生活する場合(30年)
- 支出:約5,300万
- 収入約4,200万
- 不足金額:約1,100万
それぞれの詳細は、次の通りです。
- 個人消費:月145,430円
145,430円×12ヶ月=1,745,160円(年間 約180万)1,745,160円×30年=52,354,800円(約5,300万)
- 実収入:月126,905円(可処分所得:114,663円)
114,663円×12ヶ月=1,375,956円(年間 約140万)1,375,956円×30年=41,278,680円(約4,200万) - 不足金額:月30,767円
収入114,663円-支出145,430円=不足30,767円
不足30,767円×12ヶ月×30年=11,076,120円(約1,100万)
収入と支出の差額である1,000〜1,000万が、自己資産として備えが必要な金額です。
老後に不足する金額を準備する方法については、「老後資金を増やす・確保するおすすめの方法5選」で詳しく解説します。
出典:家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要
夫婦の場合
夫婦の老後の収支シミュレーションと、不足する可能性が高い金額は次の通りです。
収入と支出の金額は、「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」のデータを基にしています。
■65歳から年金を受給して90歳まで生活する場合(25年)
- 支出:約7,600万
- 収入:約6,400万
- 不足金額:約1,200万
それぞれの詳細は、次の通りです。
- 個人消費:月250,959円
月250,959円×12ヶ月=3,011,508円(年間約300万)年3,011,508円×25年=75,287,700円(約7,600万) - 実収入:月244,580円(可処分所得:213,042円)
月213,042円×12ヶ月=2,556,504円(年間約260万)
年2,556,504円×25年=63,912,600円(約6,400万)
- 不足金額:月37,917円
収入213,042円-支出250,959円=月37,917円
月37,917円×12ヶ月×25年=11,375,100円(約1,200万)
■65歳から年金を受給して95歳まで生活する場合(30年)
- 支出:約9,100万
- 収入:約7,700万
- 不足金額:約1,400万
それぞれの詳細は、次の通りです。
- 個人消費:月250,959円
月250,959円×12ヶ月=3,011,508円(年間約300万)
年3,011,508円×30年=90,345,240円(約9,100万)
- 実収入:月244,580円(可処分所得:213,042円)
月213,042円×12ヶ月=2,556,504円(年間約260万)
年2,556,504円×30年=76,695,120円(約7,700万)
- 不足金額:月37,917円
収入213,042円-支出250,959円=月37,917円
月37,917円×12ヶ月×30年=13,650,120円(約1,400万)
収入と支出の差額である1,200〜1,400万が、自己資産として備えが必要な金額です。
老後に不足する金額を準備する方法については、「老後資金を増やす・確保するおすすめの方法5選」で詳しく解説します。
出典:家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要
老後資金を確保する前にやるべき5つのこと
老後に不足する金額が把握できたら、資産形成を始める前に次の5つの準備をおこないましょう。
- ライフプランを設計する
- 年金・退職金の金額を把握する
- 不足する金額を把握する
- 支出を削減する
- 収入を増やす
上記の5ステップを踏めば、自分の老後収支が具体的になるほか、将来の経済的負担が軽減される効果が期待できます。
1.ライフプランを設計する
老後資金を確保するために、マストで取り組んでおきたいのが人生設計です。ライフプランを明確にすることで、将来必要な老後資金が具体的になるメリットがあります。
人生設計をしない状態では、老後に必要な金額や不足する金額が分からないため、確実な準備ができません。
老後のライフイベントや予定を想定し、家賃や生活費、各種支払い、支出などが、いくらになるかを計算していきましょう。
2.年金・退職金の金額を把握する
人生設計をして必要な金額が大まかに分かったら、次は収入を計算します。老後の主な収入源は、年金や退職金などです。
- 年金→会社員は国民年金+厚生年金、個人事業主や専業主婦は国民年金のみ(厚生年金の金額は収入によって異なる)
※令和4年時点で厚生年金の平均月額は144,982円、国民年金は56,428円
年金がいくらもらえるかは、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で確認するのがおすすめです。
- 退職金→企業によって制度や支給額が大きく異なる
個別で年金や資金を準備している場合は、自己資金も合わせて計算してください。
支出と収入の金額が分かったら、老後の生活イメージができるようになります。
出典:厚生労働省年金局「厚生年金保険・国民年金事業の概況」
出典:厚生労働省|公的年金シミュレーター
3.不足する金額を把握する
人生設計で割り出した支出よりも、年金や退職金などの収入が少ない場合は、老後資金が不足する可能性が高いです。
老後に必要となる金額や受け取れる金額は変動するため、正確には算出できませんが、概算の金額は必ず把握しておきましょう。
収支のシミュレーションで老後資金が大きく不足する結果になった場合は、早い段階で個人の備えが必要です。
老後資金を確保するためにおすすめの方法については、「老後資金を増やす・確保するおすすめの方法5選」で詳しく解説します。
4.支出を削減する
老後資金が足りない場合は、生活費や各種支払いなど家計支出を減らせば、不足する金額を少なくできます。
例えば、老後の生活費を3万円安くできれば、30年で1,080万の削減になります。
- 月3万円×12ヶ月×30年=1,080万
老後資金を確保するだけでなく、支出を抑える対策も有効な選択肢です。
具体的には、固定費の見直しや各種ローンの繰り上げ返済などが、支出削減に有効です。車を保有する場合は、維持費の安い車種に乗り換えるとランニングコストを下げられます。
老後の生活費だけでなく、現在の生活費を抑えて余剰資金を将来に回すのも良いでしょう。
5.収入を増やす
固定費の削減が難しい場合や、削減してもなお不足する場合は、収入・収入源を増やすのがおすすめです。収入アップで足りない金額を補えれば、老後資金の不足を解消できます。
若いうちに備えるなら、転職や副業が収入を増やすために有効な手段です。老後の場合は、70・75歳まで働くなど、年金に依存しない生活を送ることで不足金額をカバーできます。
早い段階で長く収入を得ることを前提に仕事選びや副業をすれば、将来も安定した収入を確保できる可能性を高められます。
老後資金を増やす・確保するおすすめの方法5選
老後の不足資金を確保するのにおすすめの方法は、次の5つです。
- 年金を繰下げ受給する
- 働く期間を伸ばす
- iDeCo
- 新NISA
- 個人年金保険
1と2は老後に実践できる方法で、3〜5は早い段階で備えられる手段です。
老後資金が不足する場合でも慌てず、効果が高い適切な対策をおこないましょう。
1.年金を繰下げ受給する
貯蓄や資産運用をせず、もっとも手軽に老後資産を増やせる手段が、年金を繰り下げて受給する方法です。
繰下げ受給とは、本来65歳から受け取れる年金を70歳・75歳のように先延ばしにして受け取る方法のことです。
受給資格が発生した年から10年まで繰り下げることができ、年金が最大で84%増額になる仕組みになっています。
- 月あたり→0.7%
- 年あたり→8.4%(0.7%×12ヶ月=8.4%)
- 最大10年→84%(0.7%×12ヶ月×10年=84%)
繰下げ受給によって増額した金額は一生涯続くため、通常通り受給した人よりも2倍近く多く受け取れる点が大きなメリットです。
基礎(国民)年金、厚生年金のどちらか一方だけを繰下げ受給することもできます。65歳以上も働ける人は、繰下げ受給を活用して老後資金を増やすのがおすすめです。
2.働く期間を伸ばす
年金の繰下げ受給とセットでできる対策が、働く期間を伸ばす方法です。2024年現在では65歳が定年で、以降は年金が受け取れる仕組みになっています。
ですが、65歳以降もそのまま仕事を継続すれば、働いている期間は年金を受給しなくても生活ができます。仕事を続けて生活費を確保しながら年金を繰り下げて、老後に必要な金額を減らし、年金を増やしていくのがおすすめです。
仮に、75歳まで年金を受け取らずに働いた場合は10年分の生活費が不要になり、75歳以降は1.84倍の年金と退職金、その他資金で生活できるようになります。
老後の支出が大きくない限りは、公的年金だけで生活できる可能性が高いです。ただし、働けなくなる可能性もあるため、リスクヘッジをしておく必要があります。
繰下げ受給と定年後の勤務でも老後資金が不足する可能性がある場合は、次に紹介する3〜5の方法で備えていきましょう。
3.iDeCo
老後資金を確保するには、iDeCoがおすすめです。iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことで、政府が推奨している私的年金制度です。
国民年金や厚生年金は、掛金を納めて国が運用をしています。一方、iDeCoは自分で掛金を運用して、年金を形成する方法です。
国民年金と厚生年金を合算しても老後資金が足りない場合や、個人事業主や専業主婦で厚生年金が受け取れない場合は、iDeCoを活用すると良いでしょう。
ただし、iDeCoの掛け金は60歳になるまで原則引き出せないため、十分理解した上でおこなうようにしてください。掛金の上限や条件などについては、「iDeCo公式サイト」で詳細を確認すると良いです。
また、iDeCoのメリットや始め方、活用のコツなどを知りたい場合は、以下の記事を参考にするのがおすすめです。
出典:iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法」
4.新NISA
iDeCoと並んで、自分で資産形成をするおすすめの方法がNISAです。NISAとは少額投資非課税制度のことで、政府(金融庁)が運営している資産運用の方法です。
初心者でも少額から手軽にできるため、これから資産形成を始める人でも取り組みやすいメリットがあります。投資のため、ある程度のリスクは存在しますが、運用益や配当金が非課税になる優遇措置があり、長期で運用すれば利益を得られる可能性が高いです。
例えば、利回り3%と仮定して、毎月3万ずつ投資して20年間運用した場合、20年後の資産は985万となります。
【内訳】
- 元本:720万
- 運用益:265万
早い段階で将来に備えたい人は、NISAを活用して老後資金を確保しましょう。NISAの仕組みやメリットについてさらに詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてみてください。
出典:金融庁「NISAを知る」
5.個人年金保険
個人で備える年金には、iDeCoやNISA以外にも個人年金保険があります。個人年金保険とは、生命保険会社が提供している保険商品のことです。
保険料(掛け金)を支払うことで、将来に元本以上の金額を受け取れる仕組みになっているのが特徴です。iDeCoやNISAと比べてリスクは少ないですが、利益も少ない傾向があります。
ほとんどの場合で利益が得られますが、中途解約すると商品によっては元本割れになるリスクがあるため、仕様をよく理解した上で始めるようにしましょう。
物価は年々増加しているため老後資金は都度見直しが必要
老後資金の試算は一度したら終わりではなく、定期的に見直しが必要です。
インフレ(物価上昇)の影響で、老後に必要な金額は年々増加しているため、試算時よりも多くの資金が必要になると予想されています。また、平均寿命も延びており、老後資金が必要な期間が増えるのも要因の一つです。
平均収入は横ばいなのに対し、物価や税率は上昇し続けているため、今のままでは不足する可能性が非常に高いです。
世間の動向を注視しながら、適宜見直しをおこなうようにしてください。
まとめ:必要な老後資金がいくらか把握して早い段階で備えましょう
老後に必要な資金は、早い段階で備えておいた方が確実に有利です。将来、大きな悩みを抱えながら生活しないためにも、今のうちに計画的な準備をおこないましょう。
老後資金が不足する場合に有効な対策をあらためて確認していきます。
- 年金を繰上げ受給する
- 働く期間を伸ばす
- iDeCo
- 新NISA
- 個人年金保険
今回紹介した方法で将来の経済的な不安を解消し、安心して生活できる老後を目指しましょう。