厚生年金はいくらもらえる?計算方法や受給額を増やす方法を解説
目次
「将来、厚生年金はいくらもらえるのだろう?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。老後の生活を安心して過ごすためには、受け取れる年金額を把握し、必要に応じて受給額を増やす工夫をすることが大切です。
本記事では、厚生年金の仕組みや計算方法、受給額を増やすための具体的な方法について詳しく解説します。
- 公的年金制度の基本知識
- 厚生年金の受給額計算方法と具体的な受給額
- 年金受給額を増やす方法と老後資金の積立方法
- 厚生年金に加入しているが、具体的な受給額や計算方法を理解していない人
- 老後の資金計画を立て始めている若年層や中年層のサラリーマン、公務員
- 退職を控えた50代~60代の人
そもそも公的年金制度とは
公的年金制度は、高齢者や障害者、遺族の生活を支える重要な社会保障制度です。この制度は、現役世代が保険料を納め、その資金を元に年金給付が行われます。
公的年金制度には、国民年金と厚生年金の2つの柱があり、それぞれが互いに補完し合うことで、国民の老後の安定した生活を支えています。
厚生年金とは
厚生年金は、厚生年金保険に加入している企業に勤めるサラリーマンや公務員(70歳未満)を対象とした公的年金制度です。
ただし、サラリーマン以外のパートやアルバイターの場合でも、特定の条件に該当する場合は厚生年金への加入義務が発生するので確認が必要となります。
参考:日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
厚生年金は加入者の給与から一定の保険料が差し引かれ、企業や組織がその半分を負担します。厚生年金には、老齢年金、障害年金、遺族年金などの給付があり、様々な状況下で加入者とその家族を支えます。
国民年金とは
国民年金は、日本に住む20歳から60歳までのすべての国民が加入する基礎年金制度です。自営業者、フリーランス、パートタイマーなど、厚生年金の適用を受けない人々が主な対象となります。国民年金は、老後の最低限の生活を保障するための制度であり、加入者全員が同額の保険料を納めます。
ただし、国民年金だけでは十分な老後資金を確保することが難しいため、厚生年金がその補完的な役割を果たしています。
厚生年金はいくらもらえるのか?受給額計算方法を解説
厚生年金の受給額は、加入期間と平均標準報酬額(月額)によって決まります。計算式は複雑ですが、基本的には平成15年3月以前と以降で計算方法が異なります。
平成15年4月以降の加入月数に0.005481を、それ以前の加入月数に0.007125を掛け、平均標準報酬月額を乗じて合計すると、老齢厚生年金の受給額(報酬比例部分)が求められます。
計算式 |
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【平成15年3月以前の加入期間】:平均標準報酬月額×0.007125×加入月数 |
【平成15年4月以降の加入期間】:平均標準報酬額×0.005481×加入月数 |
ただし、正確な受給額は「年金定期便」や「ねんきんネット」で確認することをおすすめします。
厚生年金10年でいくらもらえる?
厚生年金に10年間加入し、平均標準報酬月額が30万円の場合、老齢厚生年金の受給額は月額約1万6,000円となります。この金額は、基礎年金(国民年金)とは別に支給されます。
計算式 |
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平均報酬月額30万×0.005481×120ヶ月(10年)≒年額19.7万円 年額19.7万円÷12カ月 ≒ 1万6,000円 ※全て平成15年4月以降の加入と仮定 |
厚生年金20年でいくらもらえる?
厚生年金に20年間加入し、平均標準報酬月額が30万円の場合、老齢厚生年金の受給額は月額約3万3,000円となります。10年加入の場合と比べ、受給額は約2倍に増加します。長期間の加入により、受給額が大きく上がることがわかります。
計算式 |
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・平均報酬月額30万×0.005481×240ヶ月(20年)≒年額39.4万円 ・年額39.4万円÷12カ月 ≒ 3万3,000円 ※全て平成15年4月以降の加入と仮定 |
厚生年金30年でいくらもらえる?
厚生年金に30年間加入し、平均標準報酬月額が30万円の場合、老齢厚生年金の受給額は月額約4万9,000円となります。20年加入の場合と比べ、受給額は約1.5倍に増加しています。30年という長期の加入が、老後の収入の安定につながります。
計算式 |
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・平均報酬月額30万×0.005481×360ヶ月(30年)≒年額59.1万円 ・年額59.1万円÷12カ月 ≒4万9,000円 ※全て平成15年4月以降の加入と仮定 |
厚生年金40年でいくらもらえる?
厚生年金に40年間加入し、平均標準報酬額が30万円の場合、老齢厚生年金の受給額は月額約6万6,000円となります。これは、厚生年金の加入期間としては最長であり、受給額も最大となります。40年間の長期にわたる保険料の納付が、老後の収入の安定につながります。
計算式 |
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・平均報酬月額30万×0.005481×480ヶ月(40年)≒年額78.9万円 ・年額78.9万円÷12カ月 ≒ 6万6,000円 ※全て平成15年4月以降の加入と仮定 |
厚生年金受給額早見表
下記の厚生年金受給額早見表を活用して、自身の加入期間と年収から、将来の年金受給額を簡単に確認しましょう。この表は、年収(平均標準報酬額)と加入期間に基づいて計算された、老齢厚生年金の目安額を示しています。
年収と加入期間に応じた厚生年金受給額(年額)の目安は以下の通りです。
年収(平均標準報酬額)/加入期間 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 | 40年 |
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300万円(25万) | 16万円 | 25万円 | 33万円 | 41万円 | 49万円 | 58万円 | 66万円 |
400万円(33万) | 21万円 | 32万円 | 43万円 | 54万円 | 65万円 | 76万円 | 87万円 |
500万円(41万) | 27万円 | 41万円 | 55万円 | 69万円 | 82万円 | 96万円 | 110万円 |
600万円(50万) | 32万円 | 49万円 | 65万円 | 82万円 | 98万円 | 115万円 | 131万円 |
700万円(58万) | 38万円 | 58万円 | 77万円 | 96万円 | 115万円 | 134万円 | 153万円 |
800万円(66万) | 43万円 | 65万円 | 87万円 | 109万円 | 131万円 | 153万円 | 175万円 |
900万円(75万) | 49万円 | 73万円 | 98万円 | 123万円 | 147万円 | 172万円 | 197万円 |
1,000万円(83万) | 55万円 | 82万円 | 110万円 | 137万円 | 164万円 | 192万円 | 219万円 |
この早見表を使う際は、以下の点に注意してください。
- 受給額は、加入期間と平均標準報酬額(平均年収)に大きく影響されます。加入期間が長いほど、また平均年収が高いほど、受給額は増加します。
- 表の数値はあくまでも目安であり、実際の受給額は個人の状況によって異なります。正確な受給見込額は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認することをおすすめします。
- 年金制度は将来変更される可能性があるため、定期的に最新情報を確認することが重要です。厚生労働省や日本年金機構の公式ウェブサイトで、最新の情報を入手してください。
この早見表を活用することで、自身の老後の資金計画をより具体的に考えられるでしょう。しかし、公的年金だけでなく、私的年金や貯蓄・投資など、多角的に老後資金を準備することが大切です。
早見表を参考に、自身の状況に合った資金計画を立てていきましょう。
年金受給額を増やす方法
年金受給額を増やす方法は次のとおりです。
- 付加年金への加入
- 繰下げ受給の選択
- 年収を上げる
- 60歳以降も働く
付加年金への加入
付加年金制度は、国民年金の上乗せとして月額400円の付加保険料を納付することで、将来の年金受給額を増やせる制度です。加入には、国民年金の第1号被保険者であることが条件となります。
付加年金に加入すると、受給額は月額200円×付加保険料納付月数分増加します。例えば、40年間加入した場合、年間96,000円の増額が見込めます。付加年金への加入は、年金受給額を増やすシンプルで効果的な方法の一つです。
繰下げ受給の選択
繰下げ受給制度は、年金の受給開始時期を遅らせることで、受給額を増やせる制度です。繰下げ受給を選択すると、1ヶ月ごとに年金受給額が0.7%増加します。例えば、1年繰下げると8.4%、5年繰下げると42%の増額が見込めます。
繰下げ受給のメリットは受給額の増加ですが、デメリットとして受給開始が遅くなることが挙げられます。十分な老後資金がある方や、長生きのリスクに備えたい方に適しているでしょう。
年収を上げる
厚生年金の受給額は、現役時代の年収に大きく影響されます。年収を上げることで、厚生年金保険料の増加につながり、将来の受給額アップが期待できます。
年収アップを目指すには、スキルアップによる昇進・昇格、副業による収入の増加、転職による待遇改善などが有効です。
60歳以降も働く
60歳以降も働き続けることで、厚生年金の加入期間が延長され、受給額の増加が見込めます。また、社会とのつながりを維持し、心身の健康を保つことにもつながります。ただし、60歳以降は給与水準が下がることが多いため、働いた時間に対する年金の増加額が期待ほどでない場合もあります。
自身の状況に合わせて、60歳以降の働き方を検討することが大切です。
年金以外の老後資金積立方法
年金以外の老後資金積立方法は次のとおりです。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- NISA(少額投資非課税制度)
- 定期預金
- 投資信託
- 直接株式投資
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で決めた金額を毎月積み立て、運用する私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、受取時にも税制優遇があるのがメリットです。デメリットとして、60歳まで引き出しができず、掛金に上限があり、元本割れのリスクもあります。
iDeCoは、特定の条件を満たす20歳以上65歳未満の人に適しています。運用商品の選択や加入手続きなど、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
NISA(少額投資非課税制度)
NISAは、投資信託や株式の運用益を非課税にできる制度です。つみたて投資枠と成長投資枠の2種類があり、投資期間や投資額に制限がありますが、非課税で投資できるのが大きなメリットです。
NISAを利用する際は、自分のリスク許容度に合った商品を選ぶことが大切です。NISAについて詳しくはこちらの記事をチェックしてください。
定期預金
定期預金は、一定期間お金を預けることで利息を得られる安全性の高い貯蓄方法です。リスクが低い一方で、利息率も低めです。インフレ時には資産価値が目減りする可能性もあります。
定期預金を選ぶ際は、金利の動向や利息税について理解し、長期的な資産形成の一部として活用することが賢明です。
投資信託
投資信託は、多様な資産に分散投資できるのが魅力です。専門家による運用が期待できる一方、元本割れのリスクもあります。投資信託を選ぶ際は、リスクとリターンのバランス、手数料、運用実績などを確認することが大切です。自分の投資目的や期間に合った商品を選びましょう。
直接株式投資
株式投資は、高いリターンを狙える可能性がある反面、市場リスクも高い投資方法です。長期的な視点を持ち、分散投資を心がけることが成功のカギです。株式投資を始める前に、市場動向や企業分析の方法、リスク管理について学ぶことが大切です。
自身が厚生年金をいくらもらえるのか計算しよう
本記事では、厚生年金の仕組みや受給額の計算方法、受給額を増やす方法、老後資金の積立方法などを解説しました。
自身の年金受給見込額を把握し、様々な資産形成方法を活用することが、老後の安定した生活につながります。「ねんきんネット」で受給額を確認し、本記事を参考に老後資金計画を立てましょう。