米国株投資は二重課税になる?注意点を回避するための対策を解説
目次
これから米国株投資を始めようと思っているものの、二重課税になると聞いて不安な人も多いのではないでしょうか。
米国株は日本株よりも利益が出やすいですが、配当金に対してアメリカと日本の2ヶ国で課税される仕組み(二重課税)になっているのが特徴です。ですが、米国株投資で発生する二重課税は、正しい対処をおこなえば回避できます。
この記事では、米国株投資で発生する税金の詳細と、二重課税を回避する方法について解説しています。二重課税の仕組みと対処法を理解して、税金を安く抑えたお得な米国株投資を始めましょう。
- 米国株投資で発生する課税の仕組みや種類
- 米国株の二重課税を回避する方法
- 米国株の二重課税に関する注意点
- これから投資を始めようと思っている人
- 米国株気になっているものの、二重課税を不安視している人
- 米国株投資で発生する二重課税を回避したい人
米国株投資で課税される2種類の税金
米国株投資では、次の2種類の税金が課税されます。
- 譲渡益課税(二重課税なし)
- 配当課税(二重課税あり)
それぞれの仕組みや税率を理解して、二重課税についての理解を深めましょう。
1.譲渡益課税(二重課税なし)
譲渡益課税とは米国株を売却した際、購入価格との差額(利益)に対して課される税金のことを指します。日本でのみ税率20.315%で課税され、アメリカでは非課税となっているのが譲渡益の特徴です。
アメリカでの課税はないものの、米国株投資では為替リスクが存在します。相場の変動によって為替差損が発生した場合は、損益通算を活用しましょう。
損益通算の詳細については、後ほど詳しく解説します。
為替差損益も譲渡損益に含まれる
譲渡益には株価の差額による利益だけでなく、円とドルの為替相場の変動で発生した利益も含まれます。
米国株投資で発生した運用益と、為替益を合算した利益が譲渡益です。譲渡益課税を計算するときは譲渡益だけでなく、為替差損益も考慮しましょう。
損益通算ができる
米国株投資によって発生した利益や損失は、損益通算ができます。損益通算とは、株式間で損益を相殺する制度のことです。
例えば、米国株で10万の利益が出て、他の株式で5万の損失が出た場合、課税対象となる金額は10万ー5万で「5万」です。損益通算をすれば、差し引き後の5万が課税対象となるため、税金を安く抑えられるメリットがあります。
米国株単独ではなく、他の株式と合算した後の利益で課税額が計算される点について覚えておきましょう。ただし、NISAは損益通算・繰越控除の対象外となっているため注意が必要です。
2.配当課税(二重課税あり)
配当課税とは、米国株投資で得られた配当金に対して課される税金のことです。譲渡益課税は日本でのみ課税されるのに対し、配当課税は日本とアメリカの両方で課税されます。
配当課税の税率は次の通りです。
- アメリカ→10%
- 日本→20.315%
アメリカと日本の2ヶ国で発生する配当課税が、いわゆる二重課税と呼ばれる税金です。
ただし、二重課税には対処法があるため、正しい対策を知っていればデメリットにはなりません。米国株投資で発生する二重課税を解消する方法については、後ほど詳しく解説します。
NISAの配当金は日本での税金が非課税になる
米国株投資をNISAでする場合は、そもそも二重課税になりません。NISAは、運用益課税と日本での配当課税が非課税になる優遇措置があるため、課税されるのは米国の配当課税のみです。
米国株で二重課税が発生するのは、通常(NISA以外)の投資です。そのため、NISAで投資をする場合は、米国株でも二重課税を心配する必要はありません。
米国株の配当金に発生する二重課税は確定申告で回避できる
配当金に対して米国と日本の2ヶ所で課税される米国株ですが、確定申告をおこなえば二重課税を避けられます。
確定申告には外国税額控除制度があり、活用すれば米国で課税される10%の金額を控除・還付できます。外国税額控除とは、外国株の投資によって発生した二重課税を調整するための控除制度のことです。
控除を適用した場合、実質的に支払う税金は日本の運用益課税と配当課税のみになります。課税国が日本なため、税率はいずれも20.315%です。
外国税額控除を活用しないと、米国と日本合わせて30.315%が税金として消えてしまうため注意してください。利益の手残りを少しでも増やすためにも、賢く確定申告をおこなうのがおすすめです。
ただし、NISAの場合は日本で課税される分が非課税となるため、二重課税にはなりません。
配当控除限度額の計算方法
所得税の控除には限度額が設けられており、上限以上の金額は控除できないようになっています。
配当控除限度額の計算式は、次の通りです。
- 年間の所得税額×(年間の調整国外所得金額/年間の所得総額)=所得税の控除限度額
- 年間の復興特別所得税額×(年間の調整国外所得金額/年間の所得総額)=復興特別所得税の控除限度額
確定申告をする前に、必ず自分の控除限度額を確認しておきましょう。外国税額控除の詳細は、金融庁の該当ページを参照するのがおすすめです。
米国株の配当金に発生する二重課税を控除する確定申告のやり方
米国株投資で二重課税が発生した場合の確定申告のやり方と、必要な書類は次の通りです。
確定申告で必要となる書類
- 取引内容が確認できる書類(支払い通知書など)
確定申告で提出する申告書類
- 申告書第一表、第二表、第三表
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 外国税額控除に関する明細書
確定申告の流れは、次の4ステップでおこないます。
- 必要な書類を準備する
- 国税庁のホームページで確定申告の手引きや申告書類をダウンロードする(電子申告をするは申告書類のダウンロードは不要)
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書類を作成する
- 必要な情報(所得や課税額)を入力して、内容に誤りがないか確認した上で提出する
また、確定申告には次の2種類の方法があります。
- 総合課税
- 申告分離課税
各方法の特徴とどちらが適しているかについては、次の見出しで解説していきます。
総合課税
総合課税とは、株式の課税所得をほかの課税所得と合算して納税額を算出する申告方法です。確定申告を総合課税でおこなう場合は、総所得によって税率が決まります。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
各所得を合算した合計の税率が株式の税率よりも低い場合は、総合課税を選択する方がお得です。
申告分離課税
申告分離課税とは、株式の課税所得をほかの課税所得と分けて納税額を算出する申告方法です。総合課税でトータルの税率が株式の税率よりも高くなった場合は、申告分離課税を選択しましょう。
自分の所得を合算してそれぞれの税率を算出し、課税額が少ない方法で確定申告をおこなうのがおすすめです。
米国株の二重課税で確定申告をする場合の注意点4選
米国株の二重課税を確定申告で回避する場合は、次の注意点について理解しておく必要があります。
- 新NISAは外国税額控除の対象外
- 米国株は配当控除の対象外
- 特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも確定申告が必要
- 国民健康保険の加入者は保険料が上がる可能性がある
控除ができない場合や、確定申告が裏目に出るケースも存在するため、デメリットにならないかきちんと確認した上で対応しましょう。
1.NISAは外国税額控除制度の対象外
米国株の二重課税(配当金のみ)は、確定申告で外国税額控除が適用されますが、NISAで投資をしている場合は対象外になるため注意が必要です。
NISAは税制優遇により、運用益課税20.315%と日本での配当課税20.315%が非課税になる代わりに、二重課税が控除できなくなってしまいます。
- 通常投資でかかる税金→運用益課税、アメリカと日本の配当課税
(アメリカの配当課税は控除できる) - NISAでかかる税金→アメリカの配当課税のみ
控除ができなくてもNISAにはそれ以上のメリットがあるため、それほど大きな問題にはならないでしょう。
2.米国株は配当控除の対象外
米国株は外国税額控除を適用できますが、配当控除は対象外となっています。投資で配当控除の対象となるのは、日本株のみのため注意が必要です。
外国税額控除と配当控除は併用できない点について、あらかじめ理解しておきましょう。
3.特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも確定申告が必要
米国株投資で外国税額控除制度を利用する場合は、源泉徴収ありの特定口座でも確定申告が必要になります。
特定口座で確定申告が不要なのは、所得控除をせずに源泉徴収のみで済ませる場合のみです。アメリカの二重課税に控除を適用したい場合は取引口座の種類に関わらず、確定申告をおこないましょう。
4.国民健康保険の加入者は保険料が上がる可能性がある
個人事業主や定年などの理由で国民健康保険に加入している人は、配当所得の申告によって保険料が上がる可能性があります。
配当金も所得として保険料の算定対象となるため、控除で節税を狙ったつもりがむしろ割高になるケースも存在します。
外国税額控除で受け取れる還付金と、所得の増加によって割高になる保険料を算出した上で、確定申告をするべきなのかを決めると良いです。
還付される金額よりも保険金の差額の方が高い場合は、確定申告をしない方がお得になります。確定申告をすれば必ずお得とは限らない点について理解しておきましょう。
米国株投資の税金・二重課税に関するよくある質問
米国株投資では、次のような点を疑問に感じる場合が多いです。
- 米国株投資で確定申告をしないとどうなる?
- 米国株はドルのまま売却しても税金がかかる?
- 米国株投資ではNISAを活用するべき?
上記の答えが分からない場合は、投資を始める前に必ず確認しておきましょう。
米国株投資で確定申告をしないとどうなる?
米国株投資での確定申告は義務ではなく、しなくても特に問題はありません。
面倒な申告をする手間が省けますが、その分控除ができないため二重課税を回避したい場合は、確定申告で外国税額控除をするのがおすすめです。
ただし、NISAで米国株投資をしている場合は、外国税額控除の対象外となるため注意しましょう。
米国株はドルのまま売却しても税金がかかる?
米国株はドルで購入し、ドルのまま売却した場合も課税されるため注意が必要です。購入時・売却時の為替相場で円換算され、課税額が決まります。
米国株投資ではNISAを活用するべき?
米国株投資は、NISAで始めるのがおすすめです。NISAで投資をすれば、運用益課税20.315%と日本での配当課税20.315%が非課税になる優遇措置があります。
かかる税金は米国の配当課税10%のみなため、節税効果によって通常投資よりも高い利益が見込めます。購入できる銘柄も政府(金融庁)が厳選しており、安全性が高いのもNISAのメリットです。
特に、投資に自信がない人やこれから投資を始める人はNISAで米国株投資をすると良いでしょう。
まとめ:米国株へは二重課税の仕組みをよく理解した上で投資する
米国株投資では確定申告で外国税額控除を適用すれば、二重課税を回避できます。ただし、注意点や対象外のケースもあるため、仕組みをよく理解した上でおこないましょう。
最後に、米国株の二重課税を回避するために確定申告をおこなう際の注意点について、あらためておさらいしていきます。
- 新NISAは外国税額控除の対象外
- 米国株は配当控除の対象外
- 特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも確定申告が必要
- 国民健康保険の加入者は保険料が上がる可能性がある
非課税制度や控除を活用して、お得に米国株投資をおこないましょう。