老後2000万問題とは?不足する可能性がある人や対策5選を解説
目次
世間で「老後2,000万問題」という言葉をよく耳にするものの、根拠や信ぴょう性はあるのか疑問に思っていませんか?
老後2,000万問題は、金融庁が発表した報告書が根拠となっており、将来多くの世帯に当てはまる可能性が高いです。とはいえ、自分が該当しているのかどうかや、どのような備えをしたらいいのか分からない方も多いと思います。
そこで、この記事では、老後2,000万問題が注目されている理由や、資金が不足する可能性がある人、有効な対策などを解説しています。
ぜひ、一日でも早く老後資金の問題について正しく把握し、早期に適切な備えや対策をおこなっていきましょう。
- 老後2,000万問題の詳細や根拠
- 老後2,000万問題が注目されている理由
- 老後資金が足りなくなる可能性がある人
- 老後2,000万問題に効果的な対策
- 老後資金に不安を抱えている人
- 老後に2,000万も足りなくなるのかどうか知りたい人
- 老後資金を確保するための対策が知りたい人
老後2,000万問題とは?根拠はある?
老後2000万問題とは、金融庁の報告書で、老後の30年間で約2,000万不足すると発表され、注目された話題のことです。(報告書=市場ワーキング・グループ)
つまり、金融庁の発表が、老後2,000万問題の発端になっています。
具体的には、夫65歳、妻60歳以上の高齢者世帯で毎月約5.5万円不足するという内容で、次のような内訳になっています。
月5.5万×360ヶ月(30年)=1,980万(約2,000万)
ただ、近年、物価がどんどん上昇しているため、既に2,000万では足りないとの声も聞こえてきているのが現状です。
出典:審議会報告書(金融庁) https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
老後2,000万問題が注目されている3つの背景
老後2,000万問題が注目されるようになったのには、次の3つの理由があります。
- 平均寿命の延伸
- 公的年金や退職金の減少
- 多様な働き方
政府が問題視するようになった理由と、世間で大きな注目を集めている背景を理解しておきましょう。
1.平均寿命の延伸
日本では年々、平均寿命が延びており、厚生労働省の調査では2022年時点で男性は81.05年、女性は87.09年となっています。
当然、寿命が延びれば延びるほど、生活するのに必要な資金は増えていきます。
長寿大国の日本ですが、老後に必要な資金が増加しているのも現状です。
医療や時代の発達により、平均寿命が伸びたことが、老後2,000万問題がより注目されている理由の一つです。
出典:令和4年簡易生命表(厚生労働省)life22-15.pdf (mhlw.go.jp)
2.公的年金や退職金の減少
公的年金の引き下げや退職金の減少により、老後に必要な資金が不足する傾向が強くなっていることから、老後2,000万が問題となっています。
以前までは、公的年金や退職金だけでも老後の生活は成り立っていました。
ですが、現在はこれらのみでは不十分で、貯蓄や積立などの備えが別途で必要になる可能性が高いです。
平均寿命は年々延びているのに、受け取れるお金は少なくなっているのが、老後2,000万問題が話題になっている大きな理由です。
3.多様な働き方
現在は個人事業やパートなど、多様な働き方ができる社会になっていますが、会社員や正社員以外の雇用体系だと退職金が受け取れないまたは少ないのがほとんどです。
そもそも、個人事業主やフリーランスには退職金制度がないため、自費で積み立てる必要があります。
それだけでなく、会社を設立しない限り、厚生年金にも加入できません。
働き方が多様化している反面で、老後の備え(資金)が不足しやすくなっているのが、老後2,000万問題が注目されている要因です。
老後資金が不足する可能性がある人のケース4選
老後2,000万問題への注目で老後資金の不足が懸念されている中、特にリスクが高い人は、次の4つに当てはまる人です。
- 退職金が受け取れない人・少ない人
- 公的年金の支給額が少ない人
- 貯蓄・積立が少ない人
- 毎月の出費が多い人
もし、当てはまっていた場合は、このあと紹介する老後資金対策もあわせて参考にしてみてください。
1.退職金が受け取れない人・少ない人
退職金は老後資金において非常に大きな割合を占めるため、受け取れない人や支給額が少ない人は、資金不足になる可能性が高いです。
退職金は企業や学歴、勤続年数などによって大きく異なりますが、新卒〜定年まで勤務すれば、平均で1,000〜2,000万程度になります。
この金額があるかどうかで、老後の生活や資金繰りは大きく変わります。
退職金が不足する可能性がある人は、退職金以外の方法での備えが必要です。
2.年金の支給額が少ない人
退職金と同様に、年金の支給額が少ない人も、老後資金が不足する可能性が高いです。
具体的には次の項目に当てはまる人が、年金の支給額が少ない人です。
- 専業主婦(夫)として配偶者の扶養に入っている人
- 個人事業主、フリーランスの人
上記の人はいずれも厚生年金に加入していない(できない)ため、会社員の人に比べて年金の支給額が少なくなります。
厚生年金は年収によって払込額や支給額が異なりますが、加入していないと加入している人より10万以上も支給額が少ない場合もあります。
厚生年金に加入しておらず、国民年金のみの人は国民年金基金や個人年金など、別の備えが必要です。
3.貯蓄・積立が少ない人
老後資金の確保を目的とした貯蓄や積立がない人、少ない人も、資金不足になる可能性があります。
公的年金と退職金だけでカバーできる人はなくても問題ないですが、不足する場合は貯蓄や積立、個人年金などの備えがあった方が安心です。
4.毎月の支出が多い人
普段の生活で支出が多い人も、老後資金が不足する/多く必要になる可能性があります。
特に、住宅、車などのローンが老後まで残る予定の場合は注意が必要です。
いくら、公的年金や退職金などでまとまった金額が得られても、それ以上に支出してしまっては、老後資金は不足します。
受け取れる金額よりも大きい支出が考えられる場合は、老後資金を増やすか、支出を減らすなどの対策をしましょう。
老後2,000万問題へ効果的な5つの対策
老後の資金不足が心配される場合でも、事前に適切な対策をおこなっておけばリスクを回避できます。
特に、おすすめの対策が次の5つです。
- ライフプランをシミュレーションする
- 公的年金を繰り下げて受け取る
- NISAやiDeCoを活用する(税制優遇制度)
- 貯蓄や積立投資をおこなう
- 長く働き続ける
先ほどの「老後資金が不足する可能性がある人」に当てはまっていた人は、特に活用してみてください。
1.ライフプランをシミュレーションする
老後資金や老後2,000万問題への備えとしてまずやるべきことは、ライフプランの設計と資金のシミュレーションです。
どのような生活をしていくのか、それにあたっていくら資金が必要になるのかなどが分からないと、最適な準備ができません。
金額や生活が分からないまま漠然と備えるのではなく、明確な設計をおこなった上で必要な対策を講じていくのがおすすめです。
もし、自分でライフプランや将来設計ができない場合は、ファイナンシャルプランナーに相談するのもよいでしょう。
2.公的年金を繰り下げて受け取る
老後資金を少しでも増やす手段としておすすめなのが、公的年金の受け取りを遅らせる方法です。
「繰下げ受給」と呼ばれ、65〜75歳までの間で受け取り月を1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%ずつ増額されます。
繰下げ受給の主な特徴は、次の通りです。
- 繰り下げによる増額率は一生変わらない
- 基礎年金と厚生年金を別々に繰り下げできる
- 特別支給の老齢厚生年金は繰下げ受給ができない
請求時の 年齢 | 0カ月 | 1カ月 | 2カ月 | 3カ月 | 4カ月 | 5カ月 | 6カ月 | 7カ月 | 8カ月 | 9カ月 | 10カ月 | 11カ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
66歳 | 8.4% | 9.1% | 9.8% | 10.5% | 11.2% | 11.9% | 12.6% | 13.3% | 14.0% | 14.7% | 15.4% | 16.1% |
67歳 | 16.8% | 17.5% | 18.2% | 18.9% | 19.6% | 20.3% | 21.0% | 21.7% | 22.4% | 23.1% | 23.8% | 24.5% |
68歳 | 25.2% | 25.9% | 26.6% | 27.3% | 28.0% | 28.7% | 29.4% | 30.1% | 30.8% | 31.5% | 32.2% | 32.9% |
69歳 | 33.6% | 34.3% | 35.0% | 35.7% | 36.4% | 37.1% | 37.8% | 38.5% | 39.2% | 39.9% | 40.6% | 41.3% |
70歳 | 42.0% | 42.7% | 43.4% | 44.1% | 44.8% | 45.5% | 46.2% | 46.9% | 47.6% | 48.3% | 49.0% | 49.7% |
71歳 | 50.4% | 51.1% | 51.8% | 52.5% | 53.2% | 53.9% | 54.6% | 55.3% | 56.0% | 56.7% | 57.4% | 58.1% |
72歳 | 58.8% | 59.5% | 60.2% | 60.9% | 61.6% | 62.3% | 63.0% | 63.7% | 64.4% | 65.1% | 65.8% | 66.5% |
73歳 | 67.2% | 67.9% | 68.6% | 69.3% | 70.0% | 70.7% | 71.4% | 72.1% | 72.8% | 73.5% | 74.2% | 74.9% |
74歳 | 75.6% | 76.3% | 77.0% | 77.7% | 78.4% | 79.1% | 79.8% | 80.5% | 81.2% | 81.9% | 82.6% | 83.3% |
75歳 | 84.0% |
例えば、65歳受け取りの年金を75歳まで10年繰り下げた場合、0.7%×120(10年)=最大で84%も増額になります。
誰でもできる方法なため、公的年金の受け取りが65歳以降でも支障がない場合は、繰り下げ受給も検討するとよいでしょう。
出典:日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
3.NISAやiDeCoを活用する(税制優遇制度)
効率よく、まとまった老後資金を確保するには、税制優遇制度であるNISAやiDeCoを活用するのがおすすめです。
NISAとiDeCoのそれぞれの特徴は、次の通りです。
- NISA→国が設定した少額投資非課税制度(積立投資)で、運用によって得られた利益が非課税になる(通常の投資は利益に税金がかかる)
- iDeCo→個人型確定拠出年金のことで、国が設定した私的年金制度
自分で金額を決めて積み立てて、積立金額+運用利益を60歳以降に受け取る
掛金が全額所得控除の対象となるため、節税効果がある
※原則60歳までは受け取りできない
どちらも国の優遇制度なため、節税効果や積立金額+αの利益が期待できます。
公的年金+退職金+NISA・iDeCoで備えれば、十分な老後への備えができるためおすすめです。
4.貯蓄や積立投資をおこなう
老後資金が不足する可能性がある場合に有効な対策が、貯蓄や積立投資です。
公的年金や退職金などで準備できる金額には限界があるため、不足する場合は自分で資金を用意する必要があります。
特に、公的年金や退職金の受取額が少ない人は、どれくらい不足するのかをシミュレーションした上で、補填していくのがおすすめです。
積立投資は、保険会社が提供している個人年金を活用するのも良いでしょう。
5.長く働き続ける
老後の生活資金を確保するために有効なのが、定年後も働き続けることです。
現在は、定年の延長や高齢者の雇用拡大により、年齢を重ねても働ける環境が整いつつあります。
身体を動かす仕事は健康の維持や増進につながり、座ってできる仕事は体力に自信がなくても続けられるメリットがあります。
定年後も働き続ければ、社会とのつながりを持ちながら生活資金が確保できるためおすすめです。
まとめ:老後2,000万問題は事前の備えで対応できる
老後2,000万問題は景気悪化や物価上昇などによって、今後ますます不足する金額が増えていく可能性が非常に高いです。
必要となる老後資金は人によって異なりますが、早い段階で準備や対策をおこなっておくのが重要なポイントです。
最後に、老後の資金問題に有効な対策をあらためて確認していきます。
- ライフプランをシミュレーションする
- 公的年金を繰り下げて受け取る
- NISAやiDeCoを活用する(税制優遇制度)
- 貯蓄や積立投資をおこなう
- 長く働き続ける
老後に受け取れる金額や、必要になる/不足する金額を把握して、計画的に万全な備えをしていきましょう。